(概要)
430MHz帯は、一般に430(「よんさんまる」あるいは「フォーサーティー」)と読まれ、よばれています。
430MHz帯の、特にFMは、少なくとも東京地区ではダントツに活発なアマチュア無線の周波数帯です。メインチャンネルを聞いていれば一日中いろんな局がCQを出しています。いっぱいいろんな局が出ていますので、CQを出すことが多い当局もこのバンドのFMモードでは応答に回ることが多いです。
430のFMがこれからアマチュア無線を始めるいろんな方にとって最初の無線交信バンド・交信モードになるのかなと思います。JH1DOMも2012年1月開局初の交信は430FMでした。
(装備)
430MHz帯は、アース不要の小規模のアンテナでできることがポイントです。
電波は直進性に優れ、省電力でよく飛びます。当局のシャックは80mH(メーターハイ、と読みます。地上高のことです)という場所的な強力な利点を持っていますので、0.05Wで、受け手と見通しであれば、関東平野の内側は届くだろうと思っています。もっともご存知の通り、電波の飛ぶ飛ばないは周囲の状況やアンテナによるところが大きいのが実際です。
とはいえアンテナはやはり屋外でないとなかなか機能しないと思います。当局も高さはありますが、室内からハンディ機のホイップアンテナではとても思うようにはつながりません。逆にハンディ機のホイップアンテナでも、高さがある屋外に出れば十分に飛んでいくと思います。固定局では、あるいは移動運用をするにしても、モービルホイップアンテナを購入し、アンテナを固定する機材(アンテナ基台やベランダ取付金具)を買って屋外に設置し、同軸ケーブルを買って室内のリグのところへ引き込んめば、装備としてはまず十分だと思います。この部分が免許が必要なアマチュア無線とそのほかの簡易な携帯の無線通信と異なるところです。
八木アンテナも多数販売されており、方向性を出すのなら八木となります。この場合はアンテナがぐるぐる自由に回る必要がありますのでロテーターが必要となります。アパマンハムではむつかしいでしょう。ただ、ぐるぐる回らないなら、八木アンテナを近くの大きな障害物、たとえばJH1DOMであれば富士山へ向けるのが一つの方法になるかと思います。JH1DOMも10エレのシングル八木をもっており、過去「富士山反射」で運用をしていたことがあります。ただ、実感はモービルホイップとの顕著な差は認められなかったため、結構設置に手間がかかり保守(例えば風が強い日などに)心配のかかる八木は現在はしまい込まれています。
リグは、固定局であればオールバンド・オールモード機がお勧めです。430はFM中心のバンドですが、SSBにも根強いファンはいますし、CWも稀ではありますが聞こえます。また、AMもわかりやすい周波数である430.430あたりで交信されているのを聞いたことがあります。FM専用機もよいですが、アマチュア無線家としては一歩踏み込んでオールモード機をお勧めします。
一方でハンディ機でもこのバンドは出られるのが良いところだと思います。ハンディ機もすばらしい能力があります。たとえば、同じアンテナにつなげば、当局が保有するIC7000MとSTANDARDのVX-8Gを比較すると感度は明らかにVX-8Gが上回ります。FM特化、ということであれば、決してハンディ機が引けを取るわけでもありません。
またこのバンドでは一般のFMのほかにデジタルボイスモードが交信されており、デジタルモードを目指すのであればそれが送受信できるリグが必要となります。後述しますが、デジタルモードはさほどは活発ではないと思いますので、デジタルモードはオプションと考えるのがよいのかな、という感じを持ちます。
一方でデジタルモードであるFT8に関しても交信がそれなりに活発です。興味のある方は対応できるリグをお持ちいただくのがよいと思います。
(伝播状況)
430MHz帯の伝播状況について説明します。
電波が直進性に優れることから、特に見通しで交信するときは省電力でありながら、非常にクリアに交信ができます。帯域幅は使いますが、FM交信は非常に鮮明です。6mや10mのFMとはおおよそ異なるクリアさです。ただ、2mとはそうは変わらないかもしれません。バンド幅も非常に広く、多くの近距離の電話通信は430FMに集中しているといってよいと思います。
SSBに関して言えば、電離層の反射はありませんので、基本直線見通しに限られるため、あまり使われてはいません。ただ、ダクトと呼ばれる現象が起きると430でも遠方まで電波が飛びます。ダクトが発生するときは、微弱な信号を雑音の中から拾えるかどうか、ということがポイントになりますので、モードとしてはSSBが選ばれることとなるとおもいます。もっとも、そのような遠距離交信がつながるのはまれで事前に予定を知らなければ出くわすこともないのではないかと思います。当局は、開局10年近くとなりましたが、いままでダクトに遭遇できていません。
過去の状況を振り返ってみると、JH1DOMの430での一番遠距離の交信は八丈島となっています(294キロ、20年フィールドコンテスト)。次いでトップファイブは新潟県新発田市(246キロ)、山形県米沢市(246キロ)、静岡県湖西市(219キロ)、新潟県見附市(207キロ)です。2mが丸亀市、淡路島、吹田市、寒河江市、福井県大野市などとなっているのと比べると到達距離に違い(430の方が短い)があるのが見て取れます。新潟・静岡は山岳回折かと思います。八丈島は、地上波でしょうか。
430の間接的な伝搬をトライするのであれば、富士山反射や大山反射、男体山の反射などはよく知られています。関東一円は富士山が見えるならその頂上へ向かって八木を向けると教わったことがあります。伝播は様々な経路を通る関係で方向性のあるアンテナであっても、まっすぐ向けるのが良いとは限らないのが不思議なところでもあります。
(使われ方)
・FM/デジタルモード
430MHz/FMは433.00MHzが「呼び出し周波数」とされていて、ここでQRVしたい局が呼び出しをかけたり、直接に話し相手を呼び出したりします。論より証拠ですので、初めての方はまずここへ周波数を合わせてください。その後通常は「サブチャンネル」と称される433.00以外の周波数に移り、そこで通信を行うこととなります。
いろんな方が433.00では声を出していますので、確認ください。一般の固定局、移動運用をしている移動局、ローカルグループ(親しい人同士のグループ、呼び出しの際にCQローカル、と言われるので区別できます)、バイクや車で移動しながら交信されている局など実に様々です。
通信内容は安定的な交信環境を背景として、「ゆっくり会話」がメインかと思います。別名ラグチューです。また移動局などで多数の方が呼ばれていたり、多数の方と交信することが目的であれば、会話そのものは短いことももちろんあります。アマチュア無線では、絶対必要な情報交換が終われば、交信はどちらからもいつでも(ただし紳士的に)打ち切ることができるのが原則かなと思っています。
そのほか、最近は一般のFM以外のモードの運用をされており、特にD-STARとC4FMといったモードの運用もされています。これらの新モードの呼び出し周波数は433.30MHzとされています。当局もこのバンドでD-STARの運用を始めましたが、活発にこの周波数が使われているようには思えません。CQを出すと少し応答がありますが、とてもFMにはかなわないのが実情と思います。
D-STARはレピーターの利用がなんとなく前提になっているように思いますが、正直、レピーターはあまり使われていないと思います。理由は当局から見れば簡単で、レピーターは一人が使ってしまうと他の人が使えないからです。いつでも、自由に交信できないのであれば、FMで普通にお話をすれば良いわけです。また、音声も、デジタル特有の「ケロる」(デジタル特有の音が割れて聞こえなくなる事象)という事象があり、個人的にはFM有利と思っています(スケルチを開けば連続的に聞こえる)。ただ、デジタル音声の通信は、コロナ禍により、無線通信以外の分野では急速に改良が進んだのではと思っています。遠くない将来、あるいはすでに、デジタル音声が一般の(W)FM音声のクオリティを凌駕するのだろうと思います。
なお、デジタル音声は利用帯域幅が10kcに満たないこともあり、FMのうように20kHzごとに出る必要がありません。周波数は10kHz単位で交信できることから、FMとの混信を避けるため、奇数周波数(たとえば433.31MHzなど)で交信するのがよいように感じています。ウォーターフォールが一般化する中、FMとの見分けもわかりやすいと思っています。
・SSB
430.150から430.250あたりまでが430MHz帯のSSBの利用が多いところです。
「違法」とされている局がFM電波でこのあたりにも出ることがあるとのことで、それとの被りを避けるため、慣例的に奇数のチャネル(430.150、430.170など)が使われることが多いのではないかと思います。やや伝聞調なのは、それを確かめるすべもないほどに、このバンドのSSBはあまり交信されていないからです。
スケルチを利用して微弱な電波をカットするFMと異なり、SSBは連続的に弱い電波から強い電波まで受信することができます。したがって、遠距離通信を楽しもうとするのなら、自然、SSBが選択されることになると思います。
街を歩いていると、アマチュア無線家は無意識にアンテナを探します。東京やその近辺では、立派な430用の八木アンテナが上がっているのを時々見かけます。こういったアンテナを目的の方向に向ければ、かなりの距離の交信が可能だろうと考えます。そしてお話ししたダクトなどが発生した場合の異常伝播ではきっとここが交信の中心になるのでは、と想像しています。
JH1DOMは時々430SSBでCQを出しています。聞こえてましたらぜひ応答願います。簡易な施設で遠くと通信。楽しいと思います。
・CW
430のCWは430.050あたりで交信されるはずと思いますが、JH1DOMもまれにしか出ていません。おそらくコンテストの時以外は非常に静かなのではないかと思います。UHFの電信は何といっても2mが中心と思います。
・FT8
国内のFT8は430.510MHzで交信がされています。FT8への関心の高まりは継続しており、活発にQSOを見ることができるかなと思います。
FT8は送信できるリグがあれば、簡易に交信ができる利点があり、きっと楽しめると思います。そのうちコンテストなんかにも採用されるのでは…と思ったりします。
・そのほか
430MHz/FMではレピーターの利用ができます。レピーターを利用することで遠隔地とつないで通信ができる楽しみがあります。ただ、JH1DOMは使い方が今一つ了解できず、今日までのところ、聞いていることはありますが、使ったことはありません。報告することがたまりましたらこの欄でお伝えします。D-STARも上記の通りで、一人が使うとレピーターを占有してしまうため、使い勝手は悪いと思います。レピーターの仕様を工夫することで多対多の交信が成立するようになればいいなと思います。
・
アマチュア無線の社会貢献について(本項目は書きかけとなります。もし、ご意見あれば当局までメールください)
地球温暖化の影響もあり、様々な環境の変化が、身近に感じられるようになりました。実際に災害が発生した場合、アマチュア無線が果たせる役割はあると思います。
電気の供給や有線前提でつながっているいろんなインフラが断絶したとき、アマチュア無線の出番がやってきます。そのとき、実際に使えるのは、私は430のフォーンだと思います。Radio Amateurは430を守り、裾野を広げ、プロトコルを整理し、来たるべきいざというときに供える必要があると思っています。当局に何ができるか、わかりませんが、できるところをトライしようと思っています。当局のアップデートはブログやツイッターで是非ご確認ください。
(JH1DOMの交信スタイル)
JH1DOMは、これまでCQを出すとするとSSBを中心に出ていました。
休日であれば、CQを出すとある程度応答がありましたが、次第に応答がない日が多くなり、バンドの人気が限界未満に薄れたことを感じるようになりました。
430のSSBには愛好家も多数いらっしゃると思います。ただ、これから入ってこられる方には特にSSBはハードルが高いのかもしれないと思います。
これらの事象を踏まえ、JH1DOMはSSBに加えて、最近のCQはFMで出すことも増えました。
一方でFMはいろんな局がCQを出しているので応答に回ることも少なくありません。ただ、FMのCQも、気のせいかもしれませんが、以前と比べて減っているような感覚を持ちます。
ハンディ機を外部のホイップアンテナにつなぐようになってからは、机の上に常時ハンディ機が置いてあり、これはと思う局が呼んできたときは、VX-8Gの最小出力0.05Wで応答をしています。いわゆるQRPP運用です。「これはと思う局」とは遠方から強力に届いている局のことを言います。先方が良いアンテナをこちらに向けていることは間違いないため、QRPPの電波を受けてもらえると考えるからです。QRPP運用、結構楽しめます。
SSBにせよ、FMにせよ、このバンドで出た時はお近くの皆さんとすこしお話ししたいものだと思っています。アマチュア無線でもあり、あまりプライベートなことを長々と話すものでもなく、いろんな運用スタイルの方もいらっしゃいますので、通常は5−6分くらいをだいたいのめどに次の方に移らせてもらっています。
そのほかAPRSをVX-8Gを使ってやっていたことがありました。面白い部分はありますが、ほかの方とお話しするということに力点を置くと、やや私の興味の対象からは今は外れています。きっと技術や情報が何年か前からはずっと進んでいてAPRSもおもしろくなっているのでは、と思います。そうでなければ、最新鋭のトリオのTH-D74にAPRSが搭載されることもないように思いますので。
そのほかFT8でも時々CQを出しています。FT8はまだまだ人口増加中と思います。楽しめることが多いかなと思います。
430でおあいしましょう!!!
(最終更新2021年5月8日)
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