QSO開始のための設備と準備
無線機
無線を始めるにあたって、どのリグ(無線機)を使うかのがよいのかは運用スタイルによります。
ただ、最初から運用スタイルを限定する必要もないと思います。また大は小を兼ねるですから、下は7MHzから上は430MHzまで、いろんなモードをまずはカバーしたいところです。
その意味でまず最初はオールバンド・オールモード機が選択の対象になると思います。オールモード機は入門機ではありますが、性能面ではある意味上位機種とは極端な見劣りはしないものではないかと思います。ただし、操作性の観点から考えれば、特にコンディションに大きく左右されるHF帯に関しては、専用のリグ(つまり中級機)があるほうが良いと思います。なお、現状の市販最上位機種は200Wパワーとなりますが、この機種を購入するにはそれにふさわしい電波環境の確保が必要です。すなわち本格的なアンテナを立てられ、十分に無線に費やす時間が確保できることが条件のように感じます。
JH1DOMが現在使っているリグは、上記も踏まえて、HFメイン機がアイコムのIC-7600(100W機)で、VUは同じくICOMのIC-7000M(50W機)です。
このほかにハンディ機で八重洲のVX-8Gを持っており、この三台でQRVをしています。
IC-7600も7000Mも本当に良い機械です。アマチュア無線家が必要と思う機能はおそらくもれなく搭載されているのではないかと思います。分厚い説明書を読み切れてはいませんが、困ったことがあって調べてみると必要な機能は必ずある、というのがここまでの実感です。
IC7000Mは3アマの免許が取れた時に購入しました。現在はもっぱら144MHzと430MHzの交信に使っています。IC-7600は2アマ合格に伴い購入しています。非常に優れたマシンです。不満ありません。100W出力の中級機の中では傑作と考えています。なお、IC-7600には直接の後継機種であるIC-7610が発売されました。かなり逡巡しましたが、JH1DOMはIC-7610への切り替えを決め、購入し、現在入替の手続き中です。別途記事がありますのでご覧ください。
各社がさまざまなリグを取り揃えていますので、ぜひ悩まれてください。
おそらく各社の機能はそれなりに接近しているものと思います。差異は細かいところにあるように思います。
上記の通り私はアイコム派です。私の見る限り、操作性や画面の見易さから言って圧倒的にアイコムだと思います。確かに本格的なDXerを目指すのであるならば違うのかもしれませんが、当局のようにマルチバンド・マルチモードで国内通信を目指すには、極限の製品性能が第一の選択基準にはなりにくいように感じています。そんなに混信が気になるほどバンドが混んでいるわけでも無い…実情もあります。パイルの勝ち負けはリグのせいではないと思います。
アンテナ
アマチュア無線がうまくいくかどうかはアンテナ次第だろうと思います。
街を歩く、電車に乗る、車で移動する。こういったときにアマチュア無線家は無意識に屋根の上に上がっている、あるいはわざわざ設置されているアマチュア無線用のアンテナ(群)を探します。結構あります。私が利用する西武池袋線はここ何年かで高架になりましたが、おかげさまで無線のアンテナの様子がよくわかるようになりました。結構上がっています。出張すると新幹線の車窓からもたくさん目にします。ここが工夫のしどころと思います。
私のようなアパマンハムは、しかしながら、できることに限りはあります。
まず、大規模なアンテナは使えません。場所の制約です。また、何とか置けたとしてもぐるぐる回すことを前提なものも使えません。
結論としてJH1DOMはモービルホイップアンテナを選択しています。ベランダ取付金具でベランダにこれを固定し、アースは手すりにとっています。このアースのとり方に関しては、各アパマンハムが非常に苦労されているところと聞いています。当局の場合、手すりのねじにアースを取ることによって良好なグラウンドを得ることができています。モービルホイップアンテナのSWRは1.0までチューナーなしで落ちます。これまでの交信実績から考え、飛びには問題ないものと確信しています。
その他、一時期430MHz用のシングルの八木を持っていましたが、やはり大きいので邪魔になるのと、ずっとベランダに置いたままとはさすがにいかないこともあり、現在は使っていません。当局は高層階であるため、かなり風が強いです(地上とはかなり異なります。基本的に強風が常時吹いている感じです)。モービルホイップアンテナの良いところは風が強いことを前提に作ってあることです。したがって、基本的にアンテナは常時立てたままとしています。
また、ロングワイヤ―アンテナを使っていたことがありました。これにチューナーをつなげるというやり方です。アイコムのAH-4というものを使っていました。これも非常に便利なものではあるのですが、やはり戸外に弁当箱のようなAH-4を取り付けるのは、万が一のことがあった場合に怖い点とモービルホイップとの性能差においてモービルホイップが有利というのが結論で、現在は使用していません。
JH1DOMの夢は、いつかこの場所から動く日が来れば、きちんとしたタワーを立ててそこへ必要なアンテナを上げて、一アマを取り、1000Wで正解と交信することかと思っています。
どのアマチュア無線家もおそらく近いことを考えていると思います。それぞれの環境の中で何がベストか、その中の選択と思います。
リグとの接続
アンテナを屋外に設置したら、そこからは、同軸ケーブルで、室内に引き込みます。
同軸ケーブルの種類は、これもCQオームさんのサイトなどに詳細に違いが乗っていますのでご確認いただけたらと思います。当局はできる努力は尽くす観点からある程度良いものを使っています。別途記事を作成していますのでそちらもご覧ください。予算と相談しながら種類を決め、また、アンテナからリグまでの距離で長さを決めることになります。
当局、コネクタを何度か付けました。何でもないようにユーチューブとかに載っていますが結構大変です。現在、両側にコネクタが付いている同軸が販売されているのでそれを買うのが無難と思います。
同軸は当局の場合はエアコンの屋外機をつなぐための壁面の穴を拝借して自宅へ引き込んでいます。なかなか厳しいですが三本同軸を引き入れています。それとリグとをつないでいますが、その図に関しては、同軸の記事のところへ載せておきましたのでご覧ください。
JH1DOMの場合は、IC7000MがVU専門等いこともあり、基本的にはVU用のアンテナを立ててそれをIC7000MとVX-8Gにつなぎ、HF用のアンテナを二本立てたうえでそれをIC7600へつないでいます。まもなく7610へリグは切り替えますが、同時二波受信を行うことを考えると二本HF用のアンテナが同時に使える必要があると思います。
リグとの接続に関しては、とはいうものの使い勝手を考えてアンテナ切り替え器を間に入れて切り替えができるようにしています。口述しますがSWRを確認するためにSWR計を入れたり、電波障害防止のためのコモンモードフィルタを入れたりしています。
とかくこれらの配線がリグ周辺でごちゃごちゃしがちではありますが、できるだけ簡素にしておくのが電気を取り扱う上では実際はよいと思います。実際にはリグには電鍵やヘッドセット、キーボードなどが接続されるため、さらにリグ周りは実際の運用時にはごちゃごちゃしがちですが、見栄えの良い運用がアパマンハムでは家族の理解を得るうえでも重要と考えます。
このあたり、リグの台数やシャックの環境に応じての工夫と思います。
SWRの調整
リグとアンテナの接続が終わったら、次は電波を飛ばす前のアンテナの調整となります。
アンテナの性能を引き出すためにはSWRが低いことが大原則です。また、電波障害を未然に防ぎ、運用環境を確保するためにも面倒でもSWRの調整は必要です。
IC7600には内蔵のアンテナチューナーがあり、これを使うとリグから見たアンテナとの整合は、電波を発射しようと思うバンドのモービルホイップを立てさえすればほぼ間違いなく取れます。ただ、チューニングを切ると「素」のSWRはやはり高いです。このことは、整合は取れてはいるものの、出力が無駄に消費されていることを示唆していますし、たとえばアンテナや同軸へのダメージが考えられます。
電波の飛びに関しては、やはりアンテナと同軸の接点段階でのSWRが下がっている必要があり、このためには、当局の場合はモービルホイップのエレメント長の調整をこまめに行う必要があるという結論になります。
したがって、実際の運用では細かく調整をしています。寒い日や風が強い日は厳しいですが、結局アマチュア無線は自然が相手・パートナーということかと思います。
ただ、細かい調整が必要なのはローバンド、特に7MHzかと思います。7MHzあたりだとボトムが1.0のSWRが1.5になるのが±20kcくらいであるため、例えば7.013MHzでCWをやって次に7.150MHzでSSBをやろうと思うと調整が必要となります。JH1DOMはアンテナのエレメント長と同調周波数の表を作って効率を図るようにしています。実際はその日のいろいろな条件でSWRは変わりますので注意が必要です。
ただ、どうしても外に出ることができないときは、今このチャンスを逃したくないときわめて急いでいるときは、なんといっても内蔵ATUは切り札です。正直、内蔵ATUで整合が取れていれば、飛び受けに重大な影響があるという実感はありません。電波障害の懸念払拭と、アパマンとしてのベストを尽くす使命感がSWRを調整する大きな目的となります。
なお、IC7000Mには内蔵のアンテナチューナーはないため、アンテナと同軸段階での整合が取れないとS(SWRの愛称です)が下がらないままでの運用となり、様々な意味で課題が多いです。その意味で、内蔵チューナーがある機材を利用することはメリットは極めて大かと思います。VUはアンテナの調整という概念が基本ありません。バンド幅全体がアンテナ自体でカバーできるためです。
調整の方法は以下です。
IC7600は、最近発見したのですが、RTTYにモードを設定することで試験電波を簡単に出せる設計となっています。
必要最小限の電波を発射しながら、発信の周波数を変化させ整合状況を確認していきます。目的の周波数より同調が下にあるのならエレメントを短くし、高い周波数で同調しているようならエレメントを長くします。また、同庁のボトムがバンド外となっているときはバンドエッジにかけてのSWRの変化の傾きでボトムを推定し、長くしたり・短くしたり調整を加えます。
二度目からの手間を避けるため、面倒でもエレメント長と整合周波数を記録しておくことで、次回からの調整はぐっと楽になります。
IC7000Mは記事にもしてある通り、SWR調整のための電波発射とSWR計測ができる機能が備わっているため、これを使います。手順は同じです。
いずれにせよそれなりに根気のいる仕事です。一件、全くSWRが合わないように見えたりしますが、思い余ってエレメントを切ったりしないでください。市販のアンテナです。かなりの余裕を見てだれでも使えるようになっているはずですので。ある長さと、次に試した長さの間に実はボトムがあるケースも少なくなく、少しずつ(70cmのエレメントで1cmずつくらい)出し入れしていくことが大事です。
SWR計もあるとよいと思います。第三者的に出力やSWRを見ることができます。ちょっと使い方がむつかしい部分があるのと、リグの数値と大きくは変わらないため、当局の利用頻度は減っています。
ハムログの導入
交信記録を取るためのツールが必要です。確かに現在は交信記録を取ることは法律で強制されたりはしていないと思いますが、活動の記録をきちんと残しておくのは、公共の電波をアマチュア無線を通じて使っているものの責任かと考えます。
JH1DOMはある程度の交信数をされる方はやはりハムログを使われるのをお勧めします。無料のソフトウエアであり、広く日本のハムの間で使われています。詳細な使い方はCQ出版社から冊子が出ていますのでそちらをご覧いただければと思いますが、単に交信の記録にとどまらず、データをアウトプットしての分析や、QSLの作成、さらにeQSL作成のためのログの排出等々、多彩な機能を備えています。
私のようにCQを出す側で交信するものにとってはお相手いただいている局と過去どのようなお話をさせていただいたか、どのようなQSLをいただいたか、瞬時にわかることは、電波を通じた邂逅を有意義にするために非常に重要なことで、その情報はハムログなくして得ることはできません。
手続きはむつかしくありませんので、まずはハムログをパソコンへダウンロードされることをお勧めします。
QSLの準備
アマチュア無線で交信をした場合、QSL(交信証)を交換するのが一般的と思います。ただし、これは義務でもなければ、交換しないことがいけないことでも何でもないので、相互に認め合ったもの同士での慣習という風に理解するのかと思っています。
国内、海外ともQSLのカードは取りまとめて行われており、日本では窓口は日本アマチュア無線連盟(JARL)となります。JARLの会員となれば、ビューロー経由のQSL交換サービスを受けられることになります。確かにお金はかかりますが、まずはJARLに加盟しておくのが良いのではと思います。ただ、これも加盟するしないはそれぞれの無線家の自由であると思います。JH1DOMはJARLの会員です。
次に発行するQSLの制作が必要です。必要な情報は決まっており、JARLで交換する以上一定のフォーマットに乗せる必要があります。多くの印刷屋さんが取り扱っておられますのでそれを利用してもいいですし、自分でカードを作って印刷するのもよいと思います。JH1DOMは比較的いろんな形態のQSLに取り組んできたつもりですが、ある程度デザインを考えるのも楽しいものです。
もっとも交信を証明してほしいとの依頼を受けた場合、証明しないのかどうかは微妙なところです。したがって、リクエストがあれば何らかの方法で交信結果を証明できる手段を持っているべきではとは思います。
なお、今でもQSLの中心はカードであると思いますが、当然にeQSLや、ログそのもののシェアを通じて交信証明をする方法も急速に普及しているところだと思います。2018年1月よりJH1DOMもeQSLの発行を開始し、現在、グローバルなログシェアシステムであるLoTWへの参加を手続き中です。これらの利用方法は別途項目を改めたいと思います。
はじめてのQSO
いよいよオンエアです。
アマチュア無線の交信で「いったい何を話すのですか?」と聞かれるのですが、実際には決まったことを話すのがほとんどだと思います。
交信は、双方のコールサインの確認、シグナルレポートの交換、QTHやオペレーター名の交換、時間があればリグやアンテナの紹介などが続いていくことになります。自分の感じでは、交信はだいたいここまでやればそれでおしまいとなることも多いと思います。
自分は、話しをするのが好きなので、その間に共通な話題を探したり、あるいは、先輩に質問したりしています。そもそも、アマチュア無線という共通の話題があるわけなので、話題に困ることはありません。
アマチュア無線の交信は、一見TWO-WAYですが、実際には一人が話し、終わると相手にマイクを渡すことになりますので、交互に話すという意味で、普通の会話とは異なります。どちらかというとメールに近いように思います。そういう意味で、相手の話を良く聞いて、質問に答え、次に話をつなぐということをしていくことになります。
また、アマチュア無線の交信は暗黙の了解として、どちらからも打ち切ることができるのが前提と思います。その際は、「ファイナルを送る」という操作をして終了することになります。話をしていてこれで終わろうと思うときは、自分の話すところが終わったら、「それではファイナルを送ります」、といってお別れの言葉を送信して終わりにすることになります。また、向こうからファイナルを送られることもあります。そうなった場合は、次回自分が話すところで終わりですので、そのことを頭に入れてお話をして、お別れの言葉を送ることになります。
JH1DOMは一番最初のころはもっぱら430MHz/FMでCQに応答して、いろいろなお話を先輩から聞かせていただきました。いったい何を話すのか、と他の人は思うかもしれませんが、無線を志す以上、いろんな質問があると思いますので、聞くのが良いと思います。わたしもたくさん教えていただきました。
いろんな方がいらっしゃいますが、交信を終わってがっかりした経験は皆無です。こちらががっかりさせたことはあったかもしれませんが。
どんどん話す、それでよいのではないでしょうか。
ただ、初心者と思う間は、交信相手に交信のやり方のフィードバックを求めるのが良いと思います。悪いところを指摘してもらい、直していく、そんな感じでよいのではないかと思います。
(最終アップデート 2018年1月10日)